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最終バス乗り過ごしたあとに

アラフォーのおっさんが書くあれこれ。

mellow waves /Cornelius

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Mellow Wavesリリース時に出たコーネリアス関連本。 

 

2017年に出たコーネリアスの11年振りの新作。前々作「POINT」から前作「SENSUOUS」が5年掛かっていたからそれぐらいかもうちょっと掛かるのかなと思っていたし、2012年にCM4が出たからもうそろそろかなと期待していたけどまさか11年も空くとは思っていなかった。

その間にもYMOのサポートやらsalyu×salyuのプロデュース、攻殻機動隊のサントラ、NHKの番組「デザイン・あ」の音楽制作やMETAFIVEでの活動もあったにせよ、「まさかもうCornelius名義でアルバム出さないのか??」とすら訝しんでいた。それぐらいのブランクだった。

10年代にどういう音を出すのか興味があったけどもう20年代になっちゃいますよ。って事は10年代最初で最期のアルバムになるんだろうな。

 

かつてのPOINTが「点」をテーマにしていた作りに対し今作は「揺れ(wave)」。

 

 



先ずは先行で公開、アナログカットもされたアルバムの1曲目「あなたがいるなら」。作詞は元ゆらゆら帝国坂本慎太郎氏。6分もあるこの曲の聴きどころはなんと言ってもリズム。ツィッターなどでも話題になってたところだけど一聴すると「変拍子?」と思うぐらいドラムの拍と曲の拍が合っていない。最初はドラムはリズムというより装飾的な役割で適当に叩いてるのかなと思ったけどドラムはドラムでちゃんと拍を取って聴こえるから変だなと思ってるいると、なんとこのドラム曲の拍と綺麗に半拍ずつずれながら進行している。DAW(コンピューター)上でならドラムのトラックだけを半拍ずらして再生させればいいだけの話だけど、これを人力でやるとなるとかなり大変だ。しかもテンポも遅いから余計にリズム取りにくいし。これ、ちゃんとライブでやるのだろうか、いや、やるんだろうなと思っていると先日アメリカのネット放送番組かなんかでの演奏映像が公開されてて(後ほど動画貼ります)やっぱやったんだ、すげぇなってちょっと笑ってしまった。メロディもゆらゆらしてるような拍の取りにくいものなのにドラムもこれじゃ本当に演奏は大変だろうなぁ。

そしてもう一つはややブルージーなギターソロ。でもテンポやバックのオケのせいでそうは聴こえにくい。ギター自体ももろブルージーってわけでもないしね。

  

次曲は「あなたがいるなら」と同時に先行公開、アナログカットもされた「いつか/どこか」。



いつものコーネリアスらしい、アルバム中唯一激しく歪んだギターが聴ける(そう言えばPointの”I hate hate”やSensuousの”Gum”のようなメタル系路線の曲は今回は収録されず)。

この曲も拍が取りにくく、メロディに対する歌詞の譜割りも変なところで切られていたりして思わず「(宇多田ヒカルの)オートマチックかいっ!」と一人突っ込んだり。

 


Cornelius 『いつか / どこか』 Sometime / Someplace (Live)

 

このアナログ盤にはB面にアルバム未収録でこれまた坂本慎太郎氏作詞の「悪くない、この感じ」が収められている。まだ未聴なので凄く気になるところ。

 

「未来の人へ」はこれまた坂本慎太郎氏作詞の歌モノ曲。違う人の言葉で歌うコーネリアスってのも誰かのカバーを歌っているように聞こえて少々妙でもある。あとこの曲はアコギ一本でもっとエモーショナルに歌えばフォークとしてなかなか良さそうな感じがする。groovsionsが手掛けたMVも素晴らしく、今作のMVの中で一番好きです。

 


Cornelius 『未来の人へ』Dear Future Person

 

“Surfing on Mind Waves pt2”は攻殻機動隊のサントラに入ってた曲のバージョン違いで、ドローンという一つの音が途切れずずっと続くインスト。サントラの方は映画に合わせて暗めな感じだけどこちらのバージョンはなんとなくドリーミーな仕上がりに。

サントラ版のpt1

 

今作一番のポップトラック「夢の中で」。MVはgroovisionsによるユニークな映像。全般アニメーションで本人は出てこない。

 


Cornelius 『夢の中で』 In a Dream

音はイントロ部に10年代のトレンドの一つであるchill wave〜vapor wave風味な音処理がなされ、全体的な構成はヴァース/ブリッヂ/コーラスとしっかり“ポップソング”として作られていて、ヴァースは休符を使ったカクカクしたよくベースラインに使われていそうなメロ、ブリッヂでは「心拍数は上昇中」「野生生物減少中」「深呼吸で調整中」など韻を踏みつつ、コーラスでは広がりのある展開へ…と思いきやコーラスにあたるところの最後はまたブリッヂのメロディが出てくる。となると構成的にはヴァース/コーラス/コーラス(2)って捉えた方がいいのかも。曲調としても音色としても前作(Sensuous)に入ってそうな感じ。

リズムも普通(スネアが2拍4拍に入ってる4拍子)ここまでちゃんとしたポップソングってのもかなり久々だし、このアルバムは全体的に地味で淡々(正にメロウ)としてるからこの曲があることでいい清涼剤的な効果をもたらしていると思う。曲順も丁度アルバムの真ん中に配置されてるところからもそういう意図が汲める。

 


Cornelius - In a Dream (remixed by Haruomi Hosono)

 

 

因みにその次に切られたアナログ盤としてリリースされ、B面にはこれまたアルバム未収録(iTunesでの予約販売限定ボーナストラック)の「夢の奥で」という曲だけど、こちらはYouTubeでMVが公開されている。

 



幼少期の本人だと思うけど曲がトラウマチックでちょっと怖い。

 

 

ここからはアナログで言えばB面であるアルバムの後半はこれまた拍子の取りにくいオルガン系とギターのフレーズから始まるミニマルな歌モノ「Helix/Spiral」。リミックス映えしそうな曲。


HELIX / SPIRAL - LIVE @ LIQUIDROOM 7/12

 

今作中最も古い曲らしい「Mellow Yellow Feel」は懐かしい炭酸飲料水「メローイエロー」を思い出してしまう。

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(ドノヴァンの”MELLOW YELLOW”もイメージしたのかな?)

 

ゲストボーカル(LUSH)がメインを取る「The Spell Of Vanishing Loverliness」。何となく曲調とゲーストボーカル参加って点で前作の「Omstart」に近い印象。


Cornelius - The Spell of a Vanishing Loveliness

 

POINT時期の作風っぽいアコギを使った「The Rain Song」と続き、インストの「Crepuscule」でアルバムのエンディングへ。

アルバム最後の曲は毎回如何にもクロージングって感じの曲で閉めますね。

 

 


変則的な構成でのスタジオライブ映像。

 

全10曲で40分。昔で言うと46分テープに綺麗にA面B面入るコンパクトさ。それは本人もかなり意識していたとの事。

攻殻機動隊での坂本氏への作詞の依頼、「METAFIVEにアップテンポの曲を提供したから今作にはそういう曲は除外した」という点でも結果的にSENSUOUS以降、2010年代の集大成とも言えなくもない内容のアルバム。作風としては20年前のFANTASMAと比べるとかなり変化で、老いたというか大人になったというか時間の経過を感じさせる(そう言えばMellowって円熟って意味もあるしね)。

ただインタビューなどで「久々に歌モノがやりたくなった」と発言していたのでてっきり「1stっぽいソングオリエンテッドなアルバムになるのか?!」「今更フリッパーズ回帰みたいな事してもなぁ」とちょっと懸念していたけどさすがにそれはなかった。初期の頃の曲はライブでPOINT以降やってないと思うし、今あの頃の曲やるのも本人としても恥ずかしそうだよなぁ、なんて思うし。

 

「あなたがいるなら」然り、「いつか/どこか」や「未来の人へ」など相変わらず人力変拍子バンドとしても健在ではあるものの、Mellowがテーマだけあって今作は「静」の要素が強い作品だったので次作ではまたガンガンギター弾いて「動」なコーネリアスが聴きたい。特にMETAFIVEの”DON’T MOVE”のコーネリアスバージョンなんて聴いてみたいなぁ。この曲のギター、音やリフ含めてめちゃくちゃかっこいいもんね。

 



最後にオマケで自前の「夢の中で」のインストカバーを。オリジナルの音を使いつつ、ドリーミーって事でI am robot and proud風味のフレーズやヒップホップなどでよく使われる軽めの電子スネアの音などで作りました。初めて聴いた時に「お、カバーしたいな」と思わされたのはやっぱりアルバム中一番ポップで構成もしっかりしているからだと思います(バンドでやるならやっぱり「いつか/どこか」ですね。難しいけど)。逆に「Helix/Spiral」はリミックスしたいなぁ。挑戦しようかな?

 


In a dream (夢の中で) Inst.cover full length