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最終バス乗り過ごしたあとに

アラフォーのおっさんが書くあれこれ。

名もなき詩 / Mr Children

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96年にリリースされたミスチルのシングル。確か和久井映見のドラマの主題歌だったと思う。元々ミスチルに強い興味を持てなかったため彼らの曲(特に98年の活動再開以降)はほぼ知らないのだけどこの曲は好きだった。

ミスチルは中学生だった92年ごろ「GB」や「WHAT’S IN」の音楽情報誌でデビューしたての新人として目にして(同時期にシャ乱Qもいたけど「これは売れんやろ」と思ってた)「変なバンド名だなぁ」と思っていた。実際に曲を初めて耳にしたのはポッキーのCMソングだった「Replay」という曲。「ふむふむ、これがミスチルか」とメロディも良かったのでレンタル屋にシングルを借りに行った。

しかしその直後あの「CROSS ROAD」でブレイクするとは全く思わなかった。それからは破竹の勢いで「innocent world」と「Tomorrow never knows」と快進撃を続け、「Atomic heart」を出す頃にはもう王者の風格さえあった。「Tomorrow never knows」なんてイントロ聴いただけで間違いなく大ヒットすると思っていた。

その後「everybody goes」や「es」、「シーソーゲーム」とシングルを出しそれぞれミリオンヒットするも95年末になってもアルバムは出ず、「いくらまだ前のアルバムがヒットしてるとは言え今のタイミングでアルバム出さないと篠原涼子みたいになるんじゃないか(※)」と余計な心配をしていた。

※前年に小室プロデュースで「愛しさと切なさと心強さと」をリリースしメガヒットするもそれからリリースの間が空き、そらから1年後にようやくリリースされたアルバムはシングルのセールスからするとあまり売れなかった。

 

そしてその後アルバムを出さないままこのシングルが出た。そのちょっと前にB’zが出したシングル(Love Phantom)が初動売上95万枚と話題になったのだけど、このシングルはそれを大幅に更新した120万枚を記録(恐らくこの記録は未だに破られていない)。当時の音楽産業バブルが如何に凄かったかを伺い知るエピソードの一つですね。

この曲の面白いところはシンコペーションを多用したリズム。ドラムはAメロでは後半の半小節は全部タムとフロアで裏を叩いてて間を作りためている。特に面白いのは前小節の終わりからバスタムでシンコペートしているせいでリズムが食い気味になり「跳ね感」を強調している点。ベースラインもスライドを多用してカッコいい。あとアコギとエレキのストロークをそれぞれ左右に振ってミックスされているアレンジもユニーク。

ユニークついでに言えば曲の構成も多彩で、Aメロの後にBメロに移るとまたAメロに戻り(しかしこの2回目のAメロは最後のコードがCadd9になりサビへの繋がりを作っている)、そしてサビという展開をもう一度繰り返した後Cメロへ。そして短いギターソロを挟みラップっぽい早口の変則Aメロになった後、転調し最後の大サビへ。この転調の仕方がまたカッコいい。転調と言えば小室哲哉が多用する十八番の技法だけどここでは彼の前触れもなしにいきなりキーが上がる的なそれではなく、D♭/E♭→A♭と前置きを挟みながらの転調。全体的なコードワークや構成のアレンジはきっとプロデューサーの小林武史の手腕が大きいのだろう。並みのソングライターでは中々出来ないアレンジだ。こんなに凝っているのにそう感じないのはきちんと歌を中心にアレンジされているからかもしれない。

そして歌詞は人間関係性を歌ったもので裏切ったり裏切られたりと迷いながらもそれでも生きていこう的な感じ。曲中の「ノータリン」という言葉が当時の放送禁止用語だったらしいがテレビでは普通に歌われていた記憶がある。

この曲はそれまでのシングルとは違い同年の夏にリリースされたアルバム(「深海」)に収録されアルバムの先行シングルになっているものの、この年の年間シングルチャートの1位になり、自身の売り上げの中でも「Tomorrow never knows」に次ぐ2位を記録。

 

CROSSROADのブレイクから約2年ちょっとでTomorrow never knowsが売り上げ200万枚、アルバムAtomic Heartが300万枚、そしてこの曲が初動売り上げ120万枚を記録した事で90年代の王者に君臨する事を示した形となったのであった。