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最終バス乗り過ごしたあとに

アラフォーのおっさんが書くあれこれ。

globe / globe

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今日は96年、小室哲哉絶頂期に出たglobeの1stアルバムについて。globeは前年にシングル”Feel Like dAnce”(何故aだけが大文字なのか未だに謎。avexのa?)でデビュー。ドラマのタイアップもあったにも関わらずシングルのジャケは丸い赤い玉、MVやアー写すらなくラッパー+ボーカルと小室哲哉参加ののユニットという情報のみの謎めいたユニットとして売り出す。ハイの効いたその歌声から「trfのボーカルなんじゃないか?」と噂され話題になっていたのも未だに覚えている(でも僕個人は全然違うじゃんと思っていた)。

 



デビューと同時期に行われていたa-nationの原型である「TK Dance Camp’95」で初披露されたけど、暫くしてその時のライブ映像が解禁されるまではボーカルがどんな雰囲気なのかとか本当に謎であったし、正式なMVも1stアルバム後の”Is this love”まで作られる事はなかった。恐らく当時チャートを席巻していたZARD大黒摩季などのBeing系アーティストが使っていたプロモーションの仕方を少し真似たのだろう。

その全貌が明らかにされるのは同年末、3枚目の”SWEET PAIN”から”DEPARTURES”がリリースされる頃。徐々に歌番組にも出演するようになりセールス成績も”Feel Like dAnce”のオリコン3位を皮切りに次作”Joy to the love(globe)”では1位、続く”SWEET PAIN”の2位と順調に続いていく。

Joy to the love”はこの頃小室が執心していたJungleを下地に作られている(シングルのB面にはより特化した”Jungle Mix”収録)。この年だけでもあの有名なダウンタウンの浜ちゃんとのユニット”H Jungle with T”やそのダウンタウンの別音楽ユニット「GEISHA GIRLS」にもジャングルなトラックを提供、内田有紀の”Only You”(とそのシングルのB面もジャングルMIX)、安室奈美恵の”Chase the Chance”のジャングルMIX(アサヤンで滅茶苦茶使われてたあれ)などあたかも自分の専売特許かの如くジャングルづくしだった。元々は車のCMに作られるもクライアントから没にされ新たに曲を書き下ろした後やっぱり元の曲でと二転三転したらしい(因みにその時新たに書き下ろした曲が華原朋美が歌うことになる”I BELIEVE”)。この模様は当時放送されていた小室のドキュメント番組で確認できる。



 

さて、元々ラッパーとボーカルのユニットという構想は当時日本でも売れていた”2 UNLIMITED”を参考にしたと小室哲哉本人も言っていた。本家の方もダンスビートにソウルフルな女性ボーカルと黒人系のラッパーの組み合わせで(※当時Green dayの”Basket case”と共に”No Limit”や”The Real Thing”がよくボーリング場などのMVジュークボックスでガンガンかかりまくっていた。今みたいにYouTubeどころかネットがない時代にMVを観ようと思ったら1曲100円でアミューズメント施設にあった映像ジュークボックスで視聴するしかなかったのだ)、世界規模で売れに売れていた。

 

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 在りし日の2 UNLIMITED。

 

小室自身は勿論、ラップなどしたこともないモデルのマークパンサーをラッパーとして引っ張り出し、オーディションで発掘したKEIKOを加えて「オレンジ」というユニットとしてデビューさせようとしていたらしいが、そこに小室哲哉も加わるようになり「globe」と改めてデビュー。一応ラッパー+ボーカルというスタイルは取り入れているものの、曲自体は全然ポップス。

実際Feel〜はAメロはラップで構成しているものの、BメロはいきなりAマイナーの哀愁のあるメロディ、大サビでは小室の伝家の宝刀である転調で盛りに盛り上がる。ダンスミュージックって一定のビートで大袈裟な展開もなくただひたすら進行していくのものであるのに対し、これは構成から何からただのポップスである。この曲に限った事ではないが小室のいうdAnceってダンスミュージックのダンスではない。まぁそれだと日本じゃ売れないしそれはそれで面白かったりするんだけども。

 

そして年が明けた元旦、遂にジャケットにメンバーの顔が登場した”Departures”が発売される。ラップを抜けばこの曲もサビとAメロしかないシンプルな構成で、Aメロはペンタトニック風のスケール+シンコペーションのメロの繰り返しで単調であるのにも関わらず、それが切なくてかなりの美メロ。この曲はサビよりもAメロである。

コード進行もD♭→E♭→A♭(Fm)と簡素。サビもイメージの割にはそんなに動かない。さらに言えばAメロがFmで終わるのにサビもベース音がFで始まるので何かサビに来ても抜けきれないというか展開が地続きみたいに感じてモヤモヤする。さっきも書いた通りこの曲はサビよりAメロと言ったのはここも理由の一つ。JRskiskiのCMソングという事もあり「如何にも冬」ってイメージなアレンジと相まって名曲大決定、200万枚をセールスしぶっちぎりの1位。


globe - DEPARTURES

前年のtrfが記録した3枚連続シングルリリースで全てミリオンからのアルバムが200万枚って前例があった故にこの次に出るとされるアルバムは物凄いセールスになるんだろうなぁと誰もが思っていたはず。

余談だけども当時誰も指摘してなくて個人的に面白いなと思っていたところはFeel〜からFREEDOM(正確にはcan’t stop fallin’in loveまでは微妙に使われている)までの全シングルで必ずファルセットを使うパートがあった事。小室本人が意識してそう歌唱指導したのかは不明だけど、出そうと思えば出せるはずの音域で敢えてファルセットを使って歌うところに他のプロデュースアーティストにはないユニークさがあると感じていた。

 

そして満を持してリリースされたアルバム「globe」は初動売上だけで200万枚を突破し、最終的には455万枚のセールスを記録したらしい(自分もその1/4550000でした)。

蓋を開ければ結局「2-UNLIMITED云々」は単にスタイルにしか過ぎず、年に1枚出す小室哲哉その時の集大成(オープニングには前奏のovertureチューンにピアノソロ曲収録など)、乱暴に言えば前年のtrfの「dAnce to positive第2弾」って感じ。まぁそれも商業的に狙ってたところだし聴き手だって誰もがそれを望んでいたからその結果があの数字なんだと思う。漏れなく収録された全シングルも変なリミックスはせず、アルバム曲としてもシンプルなピアノとボーカルだけで最後はこれでもかと転調しまくりで盛り上げる「Precious Memories」や小室得意の軽快な鍵盤のカッティングが印象的な「GONNA BE ALRIGHT」、ハイトーンなボーカルでポップな「Regret of the day」、少し引いて通受けを狙ったようなマークパンサーメインの「Music Takes Me Higher」など。個人的にはtrfのdAnce to positiveにあったピアノ曲「overnight piano dream」に続くようなラストのピアノインスト「LIGHTS OUT」がもっとドラマチックなものだったら良かったのになぁ、とそこは不満だった。

“FRERDOM”みたいにちょい社会派的な歌詞もあるけど今作はとことんポップ。次作「FACES PLACES」から取り入れることになるオルタナティブロックの要素に伴って歌われる歌詞の世界観もダークなものになっていくのに対しこのアルバムは終始普遍的というかそこら辺にいる普通の女性(もっと言えば20代くらいのOL)の日常や心情が歌われている。小室もロン毛になったりKEIKOなんてまんまNO DOUBTのグェン・ステファニーみたいな金髪の髪型とメイクになっていくのに対してこの頃までのKEIKOはどこにでもいそうな普通の女性って感じだったし。

特にGONNA BE ALRIGHTの主人公の年上のお姉さんやその曲調は、リリースと同時期に放送されていたキムタクと山口智子主演のドラマ「ロンバケ」の雰囲気にもリンクしたり、regret of the dayや他の曲も何処と無くテレビか作るあの時代の雰囲気とマッチしてたように感じていた。テレビから流れてくる「東京」の情景や生活臭というか。

個人的にも今でもglobeって1stの頃にあった「普通っぽさ」が好きだなぁ。小室作品の中でも"Feel Like dAnce”と”DEPARTURES”はベスト10に入るくらい好きだし、後の作品にはない軽さもいい。まぁ色々他にも言いたい事はあるけれど(特に歌詞)そこはまた後々書こうと思います。

 

では初期のインタビューとスタジオライブ映像で締めたいと思います。